[2010年12月15日]

第47回 独立記念日に寄せて 
駐日ケニア共和国大使よりメッセージ

12月12日は、ケニア共和国の独立記念日です

ケニア共和国の歴史にとって非常に重要なこの日に、ケニア政府そしてケニアの人々を代表して、明仁天皇陛下様、美智子皇后陛下様、そして日本政府、友好的な日本の国民の皆さまに向けて、温かくそして丁重なご挨拶を述べさせていただきます。ケニアと日本つながりを象徴する、両国にとって恩恵のある協力に感謝しながら、この素晴らしい機会を日本の皆さんと一緒にお祝いしたいと思います。また、この機会を利用して、日本の皆さんが、ケニアと日本のより強い結びつきのために寄せてくださるご支援と貢献に感謝申し上げます。

47年前の独立以来、発展にむけてのケニアの挑戦と大望の達成のために、日本の人々はいつもケニアを応援し続けてくれています。当時から日本は、ケニアの重要な開発パートナーです。また、アフリカへの開発協力におけるモデルを示している日本の素晴らしい栄誉を誇りに思います。

この一年は、2国間の関係に刺激が与えられた年でした。2月には、ケニア共和国の首相が政府高官とケニアのビジネスリーダーたちを連れ、4日間にわたり日本を公式訪問しました。引き続き3月には、徳仁皇太子殿下がケニアを訪問なさいました。また、その後の9ケ月の間には、6人の大臣がケニアから日本を公式訪問しています。これらの高官の交流は、現存する2国間の関係をさらに強固なものにしたことでしょう。

東アフリカそして中央アフリカへのゲートウェイ、ハブとして、ケニアは、日本の外交、商取引における、このエリアにおけるオペレーションセンターの役割を果たしています。今日、ナイロビにはアフリカ最大級の日本人コミュニティがあり、日本からの主な政府機関や主要な商社は、この地域における本部を置いています。日本のケニアへの開発協力は、1964年に始まりました。開発協力の分野は、かなり広範囲に及びます。無償援助、借款援助、技術協力として提供される日本からのケニア支援の合計は、4,200億円を超えています。現在、2国間の協力は、次の5つの分野に集約されてきています: 経済インフラ、農業、人材開発、健康、環境。

経済インフラにおいて、ケニアと日本の協力は、ケニアの開発における青写真である“Vision 2030”に最優先事項として、明記されています。”Vision 2030”の開発戦略は、次の20年間で人々の生活品質を向上し、ケニアを中所得国に成長させることを目的にしています。引き続き、ケニア政府は、特に道路ネットワーク、発電、流通、そして遠距離通信ネットワークのインフラ整備に取り組んでいます。また、空港、港の近代化も推し進めています。これらは、ケニアを地域における投資、サービス、商業の中心と位置づけるだけでなく、世界的な競争力をつけることを意味します。これらの分野における、日本からの最近の支援は、発電、港湾拡張、中小企業への技術協力などが挙げられます。

農業における日本の協力分野は、その生産性とフードセキュリティへのケニアの挑戦を増進させることにあります。これは、国連ミレニアム開発目標Tの達成のために、非常に重要なことです。また、10年以内にアフリカにおける米の生産を2倍にすることを目的に2008年に組織された、“アフリカ稲作振興のための共同体(CARD-Coalition for African Rice Development)”の事務局が、ナイロビに置かれています。CARDのイニシアティブにより、ケニアの主な灌漑事業計画のひとつであるムウェア(Mwea)は、立派に拡張されました。それに加え、日本は、ケニア、さらに東アフリカ一帯で発生している長期にわたる干ばつと食糧難への支援における、最も積極的なパートナー国の一つです。

日本は、長年にわたりケニアの人材開発を支援しています。ジョモ・ケニヤッタ農工大学は、日本によって建てられ、それ以降も日本によって支援されています。6,000人以上のケニア人が、国際協力機構(JICA-Japan International Cooperation Agency)により、様々な分野におけるトレーニングを受けました。また、たくさんのケニア人学生が、日本の高等教育機関で学んでいます。現在、日本は、中等理数科教育強化計画プロジェクト(SMASSE-Strengthening of Mathematics and Science in Secondary Education)をケニアで展開しており、専門家たちをケニアに派遣しています。

ケニアと日本は、後世への環境保護について共通のビジョンを持っています。日本は、現在、都市環境管理の改善、水供給システムの改善、コミュニティ単位での洪水管理、気候変動への適応などのプロジェクトを支援しています。ケニアは、また、ナイロビにある国連事務所の強化、ケニアが共同理事を務める国際環境ガバナンス(IEG-International Environmental Governance)に、日本が継続的な支援をしていることを大変嬉しく思います。

ここで、日本政府が主催し成功裏に終了した、生物多様性条約第10回締約国会議(CBDCOP10-Conference of the Parties to the Convention on Biological Diversity)に対し、お祝いを申し上げたいと思います。名古屋議定書の採択は、限られた資源へのアクセスとその資源から生じる利益における協力を目的として、締約国間の白熱した交渉の結果です。

健康と医療サービスにおける分野では、日本はケニアにおいて、HIV/エイズ予防、健康維持/増進の2つのプログラムを優先し、支援しています。これは、国連ミレニアム開発目標のひとつである“健康”の達成に向けてのケニア政府の努力への貢献となっています。

最近では、ケニアと日本の2国間の貿易額に顕著な増加が見られます。2009年の貿易額は、500億ケニアシリング近くを記録しました。しかしながら、貿易量を比べると格差は大きく、日本にとって非常に好ましい状況となっています。ケニアは、さらなる急激な増加を期待しています。この貿易ギャップは、ケニアから日本への輸入品目を増やすこと、ジョイントベンチャーを立ち上げること、さらに直接投資を増やすことによって、埋められると考えられています。実際に、外国からの直接投資の増加は、ケニア政府が積極的に取り組んでいる重要事項であり、Vision2030にも記述されています。ここで、ケニアが外国からの投資に対してオープンで、安全な国であることを申し述べたいと思います。投資の機会は、農業、観光、エネルギー、インフラ整備、情報通信技術、金融など様々な分野に存在します。それゆえに、さらなるビジネスでの交流を日本とケニアの間に期待しますし、日本には先駆者としての役割を担って欲しいと願っています。この機会を利用いたしまして、日本の企業をケニアにご招待いたします。そして、ケニアの広範囲に及ぶ可能性を実際にお確かめください。

ケニアにご興味を持たれているビジネスマンと投資家の方は、1億2600万人のマーケットを抱える、5つの国から構成される東アフリカ共同体の可能性にも、ぜひ目を向けてください。統合のプロセスは、順調に進んでいます。税関組合の2005年からの努力により、東アフリカ共同市場協定(Common Market Protocol)が、2010年7月より採用となりました。ビジネス、投資の機会は、製造業、エネルギー、建築業、インフラ整備、観光開発、金融サービス、鉱業と広範囲にわたります。

たくさんの人々にとって、“ケニア”という名前は、野生動物と同義語に考えられているかもしれません。ケニアは、“ビッグ5(ライオン、ヒョウ、ゾウ、サイ、バッファロー)”で有名な“サファリ”発祥地です。アフリカ大陸の中で見ても、先述のビッグ5や、多様な種類の動物を観るのに、最も適した場所です。ケニアには、その他にも様々な魅力が溢れています。驚くほどたくさんの原風景が残っており、それぞれがユニークな特徴を持っています。広いサバンナ、深い森、ソーダ性、淡水の湖、高山と湖、珊瑚礁、ビーチ、中州などです。

ケニアは、例年、12,000人ほどの日本からのお客様を受け入れています。受け入れ旅行者の効果的で急激な増加は、Vision 2030にも明記されています。そのため、日本でのマーケティング活動をする目的で、ケニア政府はアヴィアレップス・マーケティングガーデンと契約を結びました。これによりケニアは、ビジネス旅行を含め、様々な形態での理想的な旅行先として、取り上げられることでしょう。
 
また、この機会を利用して、ケニア産製品の展示会への参加をご支援いただいた、日本の皆様に感謝の意を表したいと思います。ケニアは、本年3つの大きなイベントに参加しました。9月に開催されたSCAJ2010(World Specialty Coffee Association of Japan World Specialty Coffee Conference and Exhibition 2010); 同じく9月に開催されたJATA世界旅行博2010 (JATA World Tourism Congress & Travel Fair); ケニアから7社が参加した国際フラワーEXPO(International Flower Exhibition); 展示会は、ケニアの商品を紹介するだけでなく、日本のビジネス社会におけるパートナー探しの絶好の機会にもなっています。

2012年までにアフリカに向けての日本からのODAを2倍にするために、2008年に開催されたTICADW(TICAD-Tokyo International Conference for African Development)について触れることも忘れてはなりません。TICADプロセスにおいてケニアの受ける恩恵は、全ての関係機関の相互の信頼と理解のうえに成り立っており、その有用性が示されています。

今年、ケニアでは歴史に残るイベントがありました。それは、2010年8月27日に新しいケニア共和国憲法が公布されたことです。“国の再誕”もしくは“2つめの共和国の始まり”として迎えられました。新しい憲法は、ケニアの向かう道であり、経済的繁栄、社会構成、政治的安定の枠組みを私たちに示しています。 この憲法は、ケニアの国を再編成するための環境作りの枠組みを作り出しています。統治の憲法は、権力と人権の乱用ないように必要なチェックとバランスを取り込んでいます。新しい憲法は、権力組織はケニア国民に説明義務があり、公的機関はケニアの人々のために機能し、そのニーズに応えることを保障しています。

ケニアの歴史において初めて、ケニアの47郡への地方分権が行われました。これらの地方は、郡政府により運営されています。これは、中央政府をそれぞれのコミュニティのより近くに位置づけ、さらに市民に力を与えました。この新しい憲法には、男女平等と女性の地位向上に向けての法的な枠組みも示されています。

新しい憲法は、社会経済的な発展、政治的な発展、特にケニアの開発の青写真であるVision2030の達成を最重要課題に挙げています。憲法を履行するために必要な法案は、国会での承認を得るために用意されました。また、公式文書に書かれたことの実施を監督するための委員会が組織される過程にあります。パートナーの皆様の支援を受け、ケニア国民は新しい憲法が履行されることを確信しています。

またこの機会に、日本に住むケニア人たちの愛国心とケニアへの貢献に敬意を表したいと思います。彼らは、ケニアと日本の協力体制を促進しています。さらに、ケニアを輝かせ続けている陸上競技選手にも感謝を表します。日本の選手達がケニア人選手を見習い、ケニアは陸上競技において、その名を世界に広めています。また、ケニア人陸上競技選手は、彼らの“勝利”により、ケニア国民に誇りを持たせているのです。

最後に、独立記念日をお祝いするためにメッセージを寄せてくださった皆様に感謝申し上げます。繰り返しになりますが、いつもご支援とご強力をくださっている日本の友人たちに深く御礼申し上げます。さらに、この機会を利用いたしまして、皆様にとって素晴らしい年末年始となりますように、そして健康と繁栄の新年を迎えられますようにお祈りいたします。

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